「月に何本くらいの指名を取ってるの?」
「学校にも行ってるし、私はいま、本指名と場内と同伴を合わせて七十本くらいかな。ここのところあまり力入れてないから」
キャバクラ嬢の本音 カリスマキャバクラ嬢になるために
「私もなかなか平均できないけど、六十本前後ってところ。ノルマはなんとかクリアしてる」
「学生との兼業でそれだけ取れれば十分じゃない」
「でも、店長は100本を目指せって」
「必死に営業かけて、私でやっと九十本いくかいかないかってところ。不景気って声ばかり聞こえてくるし、なかなかしんどいよ」
「うちのお店には記録があって、三年前までいた人なんだけど、その人は最高で月に三〇八本の指名を取ったらしい。この記録はたぶん破られないだろうなんて店長が言ってるよ」
「それは確かにすごい。カリスマキャバクラ嬢ってとこだね。でも、どんな営業していたんだろう。ふつうに営業するだけじゃまず無理な数字じゃない?」
「その人、いまどこでなにをしているんだろう? 聞いてる?」
「なんか噂によると、パリで日本人向けの雑貨ショップを経営しているんだって。理想だよね」
「残念。パリじゃあ営業の秘訣を聞きに行けないわ。でもさ、相当稼いだんだろうね。月に指名が三〇八本っていうことは、それだけで三十万円以上になるわけでしょ。他人の給料だけど、たぶん一〇〇万円以上の月収だったんじゃないかな」
「てことは、年収一二〇〇万円? 信じられなーい」
「まあ、その人は特別だと思うけどね。でも、指名を取るために特になにかやってることってある?」
「基本的には営業電話だけだけど、場内入れてくれたお客さんにはお見送りの時にさり気なくチューする」
「ほんと? どんなチュー? ロ、それともほっぺ?」
「相手によるけど、何回か来てくれそうだなと思った人には唇を合わせて、どうかなというお客さんには類を合わすような感じで、軽くね」
「キスは抵抗あるな。なんかキスって私にとっては最後の砦、みたいなイメージがあるけど」
「キスぐらいどうってことないじゃない。で、それって効果あるの?」
「けっこうあると思う。たぶんお客さんは、勝手に次を期待するんじゃないかな。ひょっとしたら付き合ってくれるんじゃないかとかね。それで、次の日の営業電話が生きるの。
「昨日、キスしちゃってごめんなさい。まだ唇に余韻が残ってる。恥ずかしかったけど、またしてもいい?」
なんて。けっこう高い確率で、一ヵ月以内に指名で来てくれる」
「で、次に来た時にはどうするの? 当然お客さんは期待して来るわけでしょ?」
「二度目までは大丈夫。お客さんのほうも、ここで女の子に嫌われちゃったら、いいことにありつけないと思うんじゃないかな。けっこう紳士的にしてるもん。ただ、アフターの誘いは掛けて来るけどね。それをうまくイナして、またお見送りにチュー」
「なるほど。経験の成せる技ですこと(笑)」
「キャバクラ歴三年も超えて、自然に身に付いたことよ。とりあえず、さっきのカリスマさんじゃないけど、いろんなことをしないと指名のノルマは達成できないからね」
「そう言えば、うちのお店の子で、ネットの出会い系のサイトを使って営業している子がいるよ。掲示板に
『東京近郊で、真剣にお付き合いできる人をさがしています」
なんてメッセージを入れておくんだって。そうしたら四○○件以上のメールが届くんだって。なかには変態メールなんかもあるらしいけど、半分以上はまともで、そこから適当に選んでメールを何度かやり取りして、そのうちに「会いましょう」ってことになるじゃない? そうしたら「キャバクラで働いているんだけど、一度お店に来てくれるとうれしいな」みたいな返事を送る。何人かはそれで来るんだって」
「なるほどね。私には考えつかないことだし、できないわ」
「ネットで知り合って結婚までしちゃう世の中だから。これからはキャバクラ嬢も出会い系アプリを活用して営業しないといけないよね」
「チューなんて時代遅れってこと?」
「いえいえ、チューに勝るものはないんじゃないかな。ネットでおびき寄せて、チューで虜にするっていう合わせ技ができれば、指名300本に近づけるかも知れないね」
キャバクラルールを知らない客が抗争の火種になることも
「涼夏ちゃんも星亜ちゃんも、お客さんにラインIDって教えちゃう?」
「もちろん教えちゃう。ほんとうは名刺に刷り込んでおいてほしいくらい。いちいち書くのが面倒なんだもん」
「私もバンバン教えるっていうか、お客さんはかならず教えてくれって言ってくるでしょ?」
「そうだよね。やっぱり教えちゃったほうがいいんだよね」
「それはそうよ。向こうから掛かってくれば儲けもんじゃない。こっちから営業電話する手間が省けるんだし。飛んで火に入るなんとかってやつ」
「ところでさ、先輩キャバ嬢から確かにちょっと避けられてるっていうか、接し方が冷たいような感じをうけることってあるよね。露骨にイジメられようなことはないけとね」
「イジメられないだけマシかもしれない。女の多い職場だからね。いろいろあるっていうよ」
「よかった、美麗ちゃんと同じ店でなくて」
「イジメなのかどうかわからないけど、お客さんを巡ってのトラブルは一度経験したよ。ある子のヘルプでついた時に、そのお客さんが私のことを気に入ってくれて、場内してくれたの。その段階ではまだその子、指名入ってよかったね、なんて言ってくれたんだけど、次にまたそのお客さんが来て、私を指名して彼女は指名なし。それから彼女、私の客を取ったって騒ぐのよ。私は営業もしていないし」
「女の子どうしのトラブルで、いちばん多いのがそれ。悪いのはお客さんなんだけどね。はじめの子も指名すればいいのに。年配のお客さんなんかはそのへん心得があるけど、若いお客さんは夜の世界の暗黙のルールを知らないんだよね」
指名客はランクアップしてもらえる
はじめてのキャバクラへ入った場合、あるいは二度目以降でも、特に気に入った子がおらず指名なしで入ると、フリーの客として席に案内される。
しばらくすると指名の客が来るまでヘルプ待機していた女の子が、席にやってくる。
基本的には客ひとりにつき、女の子がひとり。
が、店によっては客がひとりでもふたりの女の子がつく場合がある。
彼女たちが席に滞在する時間はおよそ十分から二十分。
次のヘルプの女の子と交代するのが一般的だ。
これも店ごとに多少異なるが、おおむねそれくらいだろう。
もし、こうしてついた子が気に入らなければ、次の子を待てばいいし、店にいる間とっかえひっかえ、いろんな女の子と飲みたければ、ずっとフリーの客で通せばいい。
また、気に入った女の子がいれば、その場で指名するのがふつうだ。
これは通常「場内指名」といわれ、簡単に「場内」と呼ばれている。
客にとって指名するということは、料金に指名料なるものを加算されるが、そこでフリーの客という曖昧な立場から、一転して指名のお客様に昇格するということになる。
それ以外に、指名した女の子は基本的に退店するまで独占する権利を得ることになる。
基本的にというのは、指名した女の子に、ほかの席から指名が入った場合、独占権が重複することになり、当然掛け持ちになってしまうからである。
そうはいっても、指名することで、指名された女の子の客への意識も気に入ってくれたと変化し、ここでもフリーの客よりもランクアップする。
キャバクラ嬢側からしてみれば、収入の基本は時給と指名料であるから、指名が多ければそれだけ収入が増えることになる。
単に金銭以外の面においても、キャバクラ嬢にとって指名の本数は、そのまま彼女たちの女としての値打ちを表すことにもなる。
また、指名はキャバクラ嬢だけでなく、店にとっても売上を左右する重要なものなのである。
そこで、ほとんどの店はキャバクラ嬢に指名獲得を奨励し、厳しいノルマを課すなど積極的な営業努力を義務付けている。
店によっては、ノルマに達しなければ罰金という厳しい制度を設けているともいう。
当然、指名獲得はキャバクラ嬢にとっての大命題となる。
指を咥えて指名を待つだけでは収入も、女の値打ちも上がらないのだ。
そのためにはあの手この手、時には奥の手まで使って指名獲得に乗り出すという。
キャバクラでは軽いスキンシップはどんなお客にも効果てきめん
はじめて店に来られたお客さんは、ひとりでも団体さんでもフリーと呼ばれます。
当然指名する女の子もいないわけなので、店長さんやボーイさんが待機席にいる女の子を呼んで、席につかされます。
さあ、お仕事開始です。
席に着くと、オシボリを手渡してまずは自己紹介。
といっても名前を言うだけですけれど。
私は自己紹介しながらお客さんの手をオシボリで拭いてあげます。
これはお店のルールではありません。
私なりの、オリジナルのサービスです。
こんな軽いスキンシップでも効果抜群。
こういうのが指名につながるんですよ。
そういえばあるお客さんが、
「女の子に手を握られてもなんともないけど、オシボリで手を拭いてもらうっていうのは意外で、それにけっこうエロチックな感じだね」
なんて言ってました。
この客さん、もちろんすぐに場内してくれました。
ふつうは、それからなにを飲まれるのか聞いて、水割りならそれを作ります。
だいたい一口飲んだところで、会話がはじまります。
最初の会話は、ほとんどが
「君はいくつ?」
ですね。
そしてお決まりの返事「いくつに見えます?」って。
私たちはそうしてなんとか指名していただけるのを待つんですね。
時間帯やお客さんの入りによって変わりますが、ほとんどの場合フリーのお客さんについている時間は二十分です。
それまでに指名をもらえないと、ほかの待機の子とチェンジになります。
チェンジ後に、やっぱり最初の子がいいなと指名していただけることもありますよ。
もちろん女の子を選ぶ権利はお客さんにあります。
私たちからすれば、せっかく知り合えたわけですから、指名して欲しい。
でも、気に入られなければそれは仕方ありません。
いざとなったらこっちから「指名してください」なんてお願いすることもありますが、ほんとうはそんなことしたくない。
プライドといえばプライドですね。
だから、できるだけ笑顔を振りまいたり、お客さんの腿に手を置いたり、胸を腕に押し当てたりってことをします。
そこまでして指名にならなかったら、これはもう素直に私のことを気に入らないのだと諦めますけどね。
IT時代だからこそ営業にもライン・メールを活用
はじめてのお客さんには、かならず名刺をもらうところからはじまります。
もちろん企業の大小や肩書きは見るけど、「お名刺ください」っていって、すぐに出してくださる人はだいたい印象はいいですよね。
こっちから会社に電話することなんてありません。
ただ、店からはできるだけお名刺をいただくようにっていわれています。
姉妹店ができた時の案内状やキャンペーンの案内なんかを送りますから。
名刺はいただくだけではなくて、こっちからも渡します。
だけど、お店の作ってくれる名刺じゃ、ほかの子たちと同じでしょ。
少しでも印象付けないと、次回の指名にもつながらないし。
だから私は、OL時代にパソコンを覚えて使えるから、営業経費だって思って、パソコンとプリンターとデジカメを買って、オリジナルの顔写真入り名刺を作って使ってます。
ある程度パソコンのことがわかるお客さんなら、ほかの子とちがった私の名刺を見て、
「自分で作ってるの? パソコンいじれるんだ」
というような話になるし、そうなれば流れからラインIDは? ってことになって、ライン友だちの登録するところまでいけちゃいます。
スマホの番号を教えるよりも、ラインのほうがおたがいに煩わしくないから、いいですよ。
店に来てくれた次の日、すぐに
「昨日は楽しい夜でした。また近いうちにいろいろ教えてください」
というメッセージを送ります。
すると、ほとんどすぐに返事が入りますね。
「今度は一緒に食事でもしよう」
なんて。
ラインのいいところは返事のチェックも簡単だし、電話だったら相手の時間帯を考える必要があるし、つながったらある程度は関係のない話もしなくてはならないし、面倒です。
ただ、ラインにもコツがあって、きっちりした文面で営業すると、まずダメです。
あえてたどたどしい文章で書くこと。
もっと簡単にいっちゃえば、ラブレターですよ。
お客さんが勝手な想像を膨らませるような。
そうすれば、かならず近いうちに指名で来てくれます。
キャバ嬢からの電話は100%営業電話よ
90%のお客に電話するよ。
電話しない残りの10%はとんでもなくヤなお客か、お金を持ってないのが確実なお客。
だってそんなお客は、次に来てもらっても困るし、どんなに猫なで声を出しても来ないし、来れないじゃない?
こういうことをしゃべっちゃったのが店長に知れるとヤバイけど、はっきりいってキャバクラ嬢の電話は、これはまちがいなく100%営業だから。
それでも電話したなかの70%は、カン違いしちゃうの。
俺のことを気に入ったとか、気があるとか。まあこっちだってそれらしいことを匂わせているのは確かだけど、これで店に来てくれるからありがたいよ。
でも、正直なところ、バカじゃないと思うこともあるかな。
だってさ、ふつうに考えたら、たった一度お店で会っただけで好きになったりする?しないでしょ。
嫌いになることはあってもね。
女の子にもインスタントラブはあるけど、あくまでもプライベートな時の話。
店とお客の関係では絶対に成り立たない。
それはさ、なかには本気でお客さんに一目惚れしちゃったって子もいるよ。
うちの店の子だけどね。
その子は特に惚れっぽい子で、電車で隣り合わせた男にも恋するような子だから、サンプルにはならない。
でもさ、少しだけ救ってあげるけど、さっきも言ったようにとんでもなくヤなお客や、お金のまるでなさそうなお客には電話はしないから、電話が掛かってくるということは、お客としてそれなりに認められたってこと。
それ以上でもそれ以下でもないけど。
ついでにもっと言っちゃうと、何回か指名で通ってくれるお客は、これも勝手にそろそろヤレるかなと思うみたいだけど、それもほとんどご苦労さんって感じ。
こっちだって義理は感じるから、ヤなタイプじゃなかったら一度くらいはアフターしてもいいと思うし、したこともある。
でも、私はエッチはしないかな。
ただし、半年に一度くらいのペースで、アフターで飲みに行ってメチャ酔っぱらっちゃうことがあって、そんな時はヤバイっす。
つい「べつにいいか」ってなってしまうこともある。
後で後悔しちゃうけど。
これが怖いから、私はできるだけアフターはしないことに決めているんだ。
本音を言えば、指名獲得のためにはパンチラもあり
毎月第三週は指名強化週間になっているから、大変。
店長が決めた指名本数をクリアしないと罰金が待ってる。
目標をクリアするためにはまず第一週が肝心。
間際になって焦って、必死に営業しても無理。
だから、月はじめに頑張っちゃう。
普段はやっぱり嫌で着ない、もう完全にパンツが見える超ミニタイプの衣裳を着ますよ。
パンツは意識して、黒っぽい衣裳の時はあえて白とか薄いピンク、明るい色の衣裳の時は黒とか水玉とかにしています。
よく見えるようにね。
そうすれば場内(指名)が確実に増えるんです。
もちろん露骨に見せることはしません。
それじゃ色気もなにもなくなっちゃうでしょ。
こっちだってモロ見せは嫌だしね。
だから、家で鏡の前に座ってどうやってチラッチラッと見せるかの研究もしましたね。
この角度だとこれくらい見えるとか、このあたりにハンカチを置くと見えないとか、足はどう組み替えるのかとかね。
やりながら、私ってバカじゃないって思うこともあるけど、これもお仕事、お仕事なんて言い聞かせてる。
パンツを見たお客さんには指名強化週間に来てもらわないと、恥ずかしさを忍んでパンツを見せた甲斐がなくなりますから、すかさず営業の電話を入れます。
「昨日しっかり水玉のパンツを見られたまきかでーす。なんだかあまりお話できなくて残念でした。もしよかったら、今度安いのでいいから、パンツをプレゼントしてください。できれば再来週あたりに来てくれるとうれしいな」
こういえば、90%の確率で指名強化週間に指名で来てくれます。
でも、ほんとうにパンツを持って来てくれるお客さんは10人に4人くらいです。
後は、一緒に買いに行こうよ、なんて言いますね。
キャバ嬢の本音では、タブーのマクラで指名獲得する子もいます
最初に断っておきますが、これは私の話ではありません。
そして、本人に確認したことがないので、ほんとうなのかどうなのか、それもはっきり言えません。
ただ、状況からすれば、彼女に関するその噂は本物なのでしょう。
彼女はうちのお店の指名獲得本数連続七ヵ月ナンバー1。
それ以前は常にベスト10ランキング外で、目立つ存在ではありませんでした。
むしろ、容姿も可愛いとか美人とかいったことで語れないし、お話だって上手いとはいえない、どちらかというと、なんであなたがキャバクラにいるの?
一言でいうとそんなタイプの子。
ところが、いまや指名の本数だけでいえば、彼女はうちのお店のトップキャバクラ嬢です。
なぜ彼女がトップに立てているのか。理由は簡単。
彼女、積極的にマクラ営業しているからなんです。
マクラ営業というのは、私たちのなかで使われている言葉で、マクラ=ベッド、意味はお客さんと寝て指名を取るということです。
これはキャバクラ嬢のなかでも最低・最悪の行為で、タブーのひとつです。
もちろん彼女自身もこの仕事をはじめて一年半以上になるので、知っているはずですし、知らないわけはないでしょう。
確かにキャバクラ嬢といっても、営業をしてどんどんお客さんをお店に呼ばないと、お給料も増えませんし、厳しいノルマも課せられています。
でも、お客さんと寝て指名を取るのは、からだを売っているのとおなじです。
もちろん、お客さんとそういう仲に絶対にならないとは言い切れません。
私自身もこれまで、ふたりですがお客さんとお付き合いしたことがあります。
大人の男と女なので、肉体関係もありました。
でも、それは指名を取るためではなく、あくまでもたがいに好意を持っての恋愛です。
これも聞いた話ですが、マクラ営業しても、そのお客さんに長い間お店に来ていただくことは、ほとんど無理なのだそうです。
確かにそうすることで、義理を感じて近いうちにまた店に来てくれますが、ほとんどのお客さんにとってキャバクラ嬢と寝ることは最終の目標で、それを達成してしまったら、もうその子には興味もなく、ほかのお店に行っちゃうそうです。
その彼女は勤めはじめたころは昼の仕事もしていたのですが、不況で辞めさせられたそうです。
仕事はお店だけ。
それからまるで糸の切れた凧のように、毎晩見境なくアフターと同伴をしはじめて、それから指名がどんどん増えはじめました。
ほかにもうひとり、マクラしているんじゃないかなと思われている子がいます。
ただ、彼女の場合はいつも同じ六人か七人のお客さんと付き合っていて、うまく立ち回っているようで、みんな月に一度か二度は顔を見せます。
もしマクラするような、あるいはしている女の子がご希望なら、お店の子にたずねてみればいいですよ。
これは狡猾!キャバ嬢のプレゼント作戦の餌食になるバカ客たち
「お客からプレゼントされる前にプレゼントする」
これが私の基本営業方針です。
言うなら意外性ってやつですか。
お店のロッカーには、お客さんにプレゼントするものを三ランクに分けて、いつも二十個以上キープしてあります。
ランク一は、はじめて指名してくれたお客さん用で、単価は500円程度のものです。
たとえば携帯のストラップとか、ボールペンとか。
ランク二は二度目の指名で来てくれたお客さん用。
単価は1,000円くらいのもの。
スコッチウィスキーのミニチュアボトルとか、マネークリップとか。
ランク三はなんと単価5,000円くらいのブランド物の名刺入れ。
これは五回以上指名で来てくれて、しかも気に入ったお客さんのためのプレゼント。
もちろんお店の名前なんかは入っていませんよ。
それに、結婚している人にも大丈夫なように、会社の部下の女の子からもらったとかいっても平気な物を選んでいるつもりです。
プレゼントはすべて自腹だけど、必要経費だと思っています。
意外性っていいましたけど、私たちは黙っていてもお客さんからプレゼントされることはよくあるんです。
でも、お客さんはまさかキャバクラの女の子からプレゼントをもらえるなんて思っていないから、「はい、プレゼント」なんて渡すと、ほとんどの人がまずビックリしますよ。
そうすると、かならずまた指名で来てくれて、お返ししてくれますね。
しかも倍返しなんてもんじゃなくて、五倍十倍当たり前って感じで。
かけた経費はすぐに回収です。
損して得取れですね。
ほかにはバレンタインデーに来てくれたお客さんには、手作りのチョコレートをプレゼントします。
だから前日は大変です、というのはウソ。
ほんとうは友達に作ってもらって、それを買い取っているだけですけどね。
でも、正真正銘の手作りですから。
もちろんお客さんの誕生日もチェックしておいて、一週間前にはかならず、「〇〇日は誕生日ですよね。一緒にお祝いしたいし、プレゼントも渡したいからお店に来てください」
そう電話を入れます。
すると90%以上の確率で、誕生日の前後に来店してくれます。
だから「プレゼントはされる前にする」なんです。
キャバ嬢の本音としては、誕生日ぴったりに来店して欲しいところなのですが・・・。
キャバクラ嬢もインスタで営業しないと出遅れてしまう
私にはまったく無縁の世界だからよくわからないけど、お店の友達に、将来はウェヴデザイナーといって、インターネットのデザインをする仕事がしたいという子がいて、彼女がインスタを開設しているんですよ。
そのインスタが、たった四ヵ月でフォロワーが一万を超えたっていうからビックリ。
月に2,500人の人が見てるってこと?
ほんとによく知らないけど、一万なんて数は、すごいの一言。
それを聞いて以来、うちのお店の女の子の間では、ちょっとしたインスタブームが起こっています。
彼女に聞いてみたら、内容はほとんどプロフィールと画像のようなもので、いつ、どんなことがあったとか、いま欲しいものはこのブランドのバッグだとか、そんなものなんだって。
ただ写真はいっぱい出しているらしいんだけど。
インスタの効果はあるみたいで、まったくはじめてのフリーのお客さんが、すぐに「〇〇ちゃんって子、いるよね」って指名が入ったりします。
そうですね、だいたい一ヵ月に20人くらいはインスタを見たお客さんがつくみたい。
そこで、お店のインスタを作って欲しいと、みんなで店長に掛け合ったけど、オーナーに聞いておくといったまま、その後まったくどうなったのか、回答はありません。
まあ、たぶん無理でしょうね。
でも、近々私も自分のインスタを開設するかも知れないの。
これからはキャバクラ嬢もSNSに対応しないといけませんね。
コツコツとスマホで営業電話しなくても、インスタを見て勝手に来てくれるなんて夢のようですよね。