「ふたりはバイトだけど、同伴のノルマもあるの?」
キャバ嬢の本音 同伴ノルマほど大変なものってある?
「私は同伴に関してのノルマは、いまのところないから助かってる」
「いいなー。うちはあるよ。と言っても最低月二本だけどね。一応学生だということで、半年間はノルマ免除だったけど、その間にたまたまお客さんから同伴しようかって言われて。それでよろこんで同伴したら、店長が「できるじゃないの。じゃあ来月からノルマ持ってもらおうか」ってことになっちゃって、三ヵ月目から持たされることになった」
「私、こう見えても同伴が不得意なの」
「それはまたどうして?」
「同伴ってさ、いろいろあるじゃない。たとえば、ふつうだったらどこかで待ち合わせして、軽くご飯でも食べて、お店に入るんだけどね。ある程度システムを知ってるお客さんの場合だと、二時間ほど付き合って食事ご馳走して、それでお店に連れて行かれて、しっかりセット料金と同伴指名料を取られてって、ことを計算するわけ」
「メリットはなんだってことだよね」
「実際にお客さん側からすると、同伴はあまり得じゃないのよね。だからどうにかして元を取ろうとするじゃない」
「つまりエッチに持ち込もうということなの?」
「ぶっちゃけた話、そういうこと。でも、お客さんとしても、それを言い出すタイミングがなかなか難しいのも同伴で、結局待ち合わせするのが六時くらいでしよ。向こうだって会社があるし、仕事があるからね。それで店に入るのが八時半ごろだから、正味二時間と少ししかない」
「エッチするには微妙な時間。ラブホ(ラブホテル)の休憩がだいたいどこも二時間の設定になっているのは、お風呂にお湯を入れて、ととのったところで入って、エッチして、終わった後でシャワーを浴びて、それから女が化粧を直してっていう一連の行程にかかる時間を想定したものなんだって」
「雑学博士だね」
「お客さんに教えてもらったの」
「だから、お客さんとしては早く言い出すなり、アクションを起こすなりしないと時間がなくなるのよね。そのあたりを読みながら、言い出すタイミングを外していかないといけない。この駆け引きがけっこうしんどかったりする」
「うん、わかる。だから私の場合はズルく、最初から二十分くらい遅刻して行っちゃうの」
「怒る人だっているでしょ?」
「もちろんただ遅れるってことじゃなくて、お客さんが喜ぶような言い訳を用意して行くわけ」
「企業秘密っていうんじゃないでしょうね。教えてよ」
「じゃあ教えてあげる。プレゼントを持って行くのよ。大した物じゃなくてさ、500円くらいで売ってるようなライターとかなんだけど、ラッピングだけは大げさにしておくの。これを買ってたら遅くなっちゃった、とか言ってね。出費はあるけど」
「なるほど、考えたね。それなら時間も稼げるもんね」
「じつはこれ、むかし付き合ってたカレシが、私によく使ってた手なんだけどね。付き合いはじめたころ、ほんとうによく遅刻してきて、でもその度になんか安物だけど包みだけ立派なプレゼントを持ってきたの。来るまでは時計と睨めっこしながら怒ってるけど、「ごめん、これを買ってたら遅くなった」なんて包みを手渡されると怒りがスーッと消えちゃう。まあ、それも三度目までだったけど」
「同伴って、大変だね」
同伴は最高ランクの客になるワザなのである
キャバクラ遊びに欠かせないのが、同伴およびアフターである。
同伴とは店に出勤する前のキャバクラ嬢と待ち合わせし、お茶を飲んだり食事をした後、一緒に店に出向くという行為のことをいう。
そしてこの同伴は、キャバクラ嬢にとってメリットの大きいものと心得ておくといい。
キャバクラ嬢が同伴で店に入る場合、遅刻厳禁の店でも、三十分から一時間の遅刻が容認される。
さらに同伴で入った客はそのまま公然の指名客となるため、指名料を獲得できることになる。
当然だが、店に入るまでの飲食代などは客持ちだ。
一方、客の側における同伴のメリットは、まずキャバクラ嬢とふたりで、数時間ではあるがデート気分を味わえるということ。
また、店に入った瞬間から同伴指名の客として、同伴—指名—場内という指名序列のなかの最高位にランク付けされる。
すなわち、ほかから指名が入った場合でも、ローテーションの時間配分に差がつけられ、女の子は向こうよりもこっち側に長くいるといったように、ほとんど女の子の独占特典を得られる。
遅刻が許され、収入アップにつながるキャバクラ嬢にくらべれば、客のメリットは際立ったものではない。
この差をどのような形で埋めるのか、それは同伴する客次第といえる。
そのままお大尽を気取るもよし、都合のいい客からの脱却と費用対効果を第一に、強引に寝技に持ち込むもよし、である。
また、通常同伴は女の子側からの依頼で実現するのが一般的なパターン。
それゆえに、昨日今日の客に同伴のお誘いは来ない。
最低でも指名で三回以上通って、親しみや信頼関係が生まれてはじめて、「同伴してくれない?」の声が掛かるのである。
待ち合わせの失敗で得た同伴の教訓
はじめての同伴には失敗がつきものです。
同伴するのは何回かお店に来てくれたお客さんですが、しっかり顔を覚えているつもりでも、お店の少し落とした照明のなかで見ている顔と、お店の外での顔は印象がちがったりするのです。
ある時、たまたま同伴のノルマが足りなくて、ダメモトでたった二度来てくれただけのお客さんに電話して同伴をお願いしたら、OKしてくれました。
こういう時はほんとうに感謝の気持ちでいっぱいです。
だから待ち合わせした喫茶店にも遅刻しないように余裕を持って出かけました。
ところが、約束の時間になっても姿が見えない。
スマホに電話しようとしても、待ち合わせたお店が地下にあって圏外でつながらない。
しかたなく四十分待ってから喫茶店を出て地上に上がって電話してみました。
ところが、電源が入っていないのか、電波の届かない場所にっていうあのメッセージが流れるんです。
ああ、これはドタキャンされたかな、同伴ノルマ達成できずに店長に叱られるなと暗い気分になったりして、そのままブラブラ定時出勤時間まで過ごして、店に入りました。
そうしたらいきなり店長が、
「お前、お客さんとの待ち合わせをすっぽかしただろ」
というのです。
待ち合わせ場所にはちゃんと行きました。
四十分も待っていました。
すっぽかされたのはこっちです、と私は怒り心頭で言い返しました。
「わかった。指名が入っているから着替えろ」
そう店長にいわれ、着替えてフロアに出ると、待ち合わせしていたお客さんがそこにいたのです。
その時「あっ」と思ったのは、確かにお客さんの顔は覚えていたのですが、二回しか会っていなかったので、勝手に自分のなかでイメージを作ってしまっていたのです。
その日のお客さんは、チノパンツにボタンダウンのカラーシャツというカジュアルな感じの服装でしたが、これまでに会った二度ともスーツにネクタイという服装でした。
だから喫茶店で気付かなかった。
お客さんのほうもお店で衣裳を着ている私しか知らないので、普段着でメイクも薄めの私に気付かなかったそうです。
おたがいなーんだ、って感じで大笑いしましたけど、すっぽかされたと思ったら、その後ふつうはお店に来てくれませんよね。
でも、その人は私が待ち合わせ場所に来なかった理由だけを聞くつもりでお店に来たんだと。
そこで誤解が解けたわけですが、ほんとうに律儀で真面目な人でよかったといまでも思っています。
そのお客さんはいまでも回数こそ多くありませんが、月に一度くらい指名で来てくれて、同伴も三ヵ月に一度お願いして、付き合ってくれています。
もちろんあれ以来待ち合わせでの失敗はありません。
私の同伴の教訓は、待ち合わせはかならず携帯のつながるお店にすることと、相手のイメージを勝手に作らないこと、です。
また、お客さんに同伴をお願いした時には、かならず行きますから、多少遅刻するようなことがあっても待っていてくださいと言っています。
キャバ嬢の本音を暴露「同伴してエッチしようと思うのは大きなまちがいですよ」
何度もデートしてくれって言ってくるお客さんがいて、正直あまりタイプじゃなかったからずっと断り続けていたの。
でも、あまりの熱意にほだされて、それに指名のノルマもあったから、同伴ならいいって答えたのが大失敗。
喫茶店で会った瞬間から、
「何時までに店に入ればいい?」
とはじまったの。
「八時半くらいかな」
そう答えたら、腕時計を見て、あと二時間しかないじゃないか、とかなんとかブツブツいうの。
で、まだ注文した紅茶もきてないのに、出ようって。
同伴ってほとんどパターンが決まってて、待ち合わせて食事して、時間があればウィンドーショッピングしたり映画を観たりして、そのまま一緒にお店に入る。
だから、その時私はてっきり食事にでも行くもんだと思って、とにかく並んで歩きはじめたら、行く方向がラブホテル街。
でも、まさか、そんないきなりなんてことはない、そっちの方向にいいお店でもあって、きっとそこへ向かってるんだといい方に解釈していたのよね。
ところが、どんどんそっちへ行っちゃう。
これはヤバイかなと思って、
「まさかホテルへ行こうとしているんじゃないよね」
ちょっとキツイ口調で、怒りを表して言ってやった。
そしたらソイツ、いきなり立ち止まって、
「ここまで来てそのつもりがないとは言わせない。同伴するならそれくらいの覚悟で来てるんだろ」
なんてことを言うの。
頭にきたから、そのままもと来た道を早足で引返したら、腕をつかんで
「わかった、嫌がることはしない。時間もあまりないから、とりあえずホテルへ行こうよ」
だって。
なにそれって感じで、思わず笑っちゃいました。
いろいろなお客さんを見ているけど、そんな男はこれまでお目にかかったことがなかったもの。
同伴でホテルに誘われたことだってあるけど、ふつうはちゃんと食事していろいろ話して、それでもまだ時間もあるし、どこへ行こうかってパターンじゃない。
もちろんどんな誘われ方をしても、同伴の時にはそういうのってなしですよ。
それはただ気分的にね。
だから、ほんとうに気に入って付き合っていいと思えるような人だったら、お店の休みの日に会います。
けっきょくソイツとの同伴は不成立。
ノルマは果たせないし、腹は立つし、その日は一日中荒れていましたね。
ほかのお客さんにも迷惑かけちゃいました。
でも、ヤツはいまだに平気な顔でお店に来ています。
私は指名されてもつかないし、本人は知らないでしょうけど、女の子の間では危険人物になっていますから、だれもアフターはもちろん、ラインも教えません。
同伴することとエッチすることはまったくちがうこと。
お客さんはそれを心得ましょうね。
本音を言ってしまえば、ほんとうに困った時はヤリ同伴するしかない
ほかのお店でこんな言葉を使っているのかどうか知らないけど、うちの店には「ヤリ同伴」って言葉があるよ。
ようするにエッチ付きの同伴って意味。
ノルマがあるから営業するけど、やっぱなかなか同伴してくれるようなお客はいないよね。
そもそも同伴のノルマを作るのがまちがってるよって、何度も店長にも詰め寄ったけど、けっきょくなんだかんだ言いながら、みんなこなしちゃってる。
それで、どうしても同伴ノルマがきつくなったら、この手しかなくなってしまうの。
営業電話して同伴を頼んでも、予定があって都合が悪いとか言われるじゃん。
そこをなんとかお願い、なんて食い下がると、だったらエッチさせてくれたら同伴してやるけどな、なんてことを言ってくる。
そこで、あくまで渋々、納得していないと匂わせてから、いいよって答える。
こっちが誘ったんじゃないってことで、納得するためにね。
でもね、これはあくまで最終兵器だから、その段階ではキープという状態。
それをなんとか避けるために、それからもいろんなお客に営業攻勢をかけるよ。
それでうまくエッチなしの同伴が取れたら、キープのヤリ同伴に電話して、やっぱりいきなりエッチするのもなんだし、もう少し親しくなってからにしようね、だから近いうちにお店に来てね、って断る。
ただ、それが無理だったら、もうヤルしかない。
四時ごろに椿屋(渋谷の喫茶店)で待ち合わせして、そのままホテルに直行。
できるだけ早めに済ませて、それから食事して、一緒に店に入る。
うちの子、けっこうヤリ同伴してるよ。
同伴してきた時にわかるもん。
あっ、この子エッチしてきたなって。
そんな時「今日はヤリだったの?」って聞くし、私も聞かれるね。
ほとんど当たってるから恐ろしいよ。
同伴で大嘘ついたお客がいまはカレシです!
何度か来てくれたいつも同じ顔ぶれの三人グループのお客さんがいて、そのなかでいつも私を指名してくれる人に誘われて、一度同伴したことがあるんです。
アフターにはよく誘われるけど、同伴を誘ってくる人は珍しいですね。
それで会ったら、来週から海外に行ってしまうことになったから、三年くらいは会えないので、どうしても会いたかったなんて言われました。
きたきた、これはたぶんエッチへの誘い文句だなと思って、速攻でガード態勢にはいったけど、食事してる間にも、はじめてお店で会った時の話や、お店でした取り留めない話を、まるで思い出を語るように言うだけで、どうもそれ以上の誘いの言葉も、態度も出てこないの。
こっちが必死にガードしていただけに、なんだか肩透かしを食らったような気分で、同時にそれまで特別意識したことがなかったけど、雰囲気的に永遠の別れって感じでしんみりしちゃって、急に情や愛しさみたいな感情がこの小さな胸に湧いてきたの。
それで、このまま同伴して、お店で別れちゃうのはせつないような気がして、わたしからアフターに誘っちゃった。
だいたい同伴したお客さんは一時間ほど入店したら、義理を果たしたというように帰るんです。
私たちにしてみれば、それはできるだけ長くいてもらったほうがありがたいですよ。
でも、同伴だとお客さんも、食事代やそのほかで余分なお金を使っているわけだから、無理は言えないんですよね。
一緒に店に入ったのが八時半で、彼には一時間でお店を出てもらいました。
もう私のなかではすっかり擬似恋愛モードでしたね。
その日、私の仕事が終わるのは二時だったけど、それまで彼にどこかで待ってもらうのも悪く思えて、店長にいって十一時上がりにしてもらって、待ち合わせしました。
それだと一時間ちょっとどこかで待ってもらえばいいんだし。
早引きしてまでアフターするのなんてはじめてだな、そんなことを考えて待ち合わせ場所に向かっていたら、どんどん自分のなかで盛り上がっちゃって、もうその彼が恋しいし、せつないし。
たぶん女の子って、勝手に悲劇のヒロインになっちゃうのよね。
それで待ち合わせしていたバーで会った瞬間、これで最後なんだと涙がボロボロ。
いまから考えると笑っちゃうけど、ほんとドラマの主人公になってたの。
それから先は決まってるじゃないですか。
私の部屋へ直行しましたよ。
ほとんど連れ込んだ状態。
お客さんとエッチするなんて想像したこともなかったし、絶対に嫌だったけど、一晩中泣きながら抱き合いました。
朝、彼が帰って行くまでずっと泣いていたかな。
それからしばらくは放心状態だったけど、二週間ほど経ったころ、彼から電話があったんですよ。
帰って来たって。
一瞬よろこんじゃったけど、待てよって。
三年っていってたのはなんだったんだってね。
たった二週間ならふつうの海外旅行でしょ。
結果的にしっかり大嘘をつかれた格好だけど、救いはそれ以来まじめにカレシとして付き合ってくれているということ。
でも、女心を弄ぶような嘘は、たとえ相手がキャバクラ嬢でもいけませんよね。