若い女性を隣に座らせて、どうでもいい話をしながら酒を飲む場所である。
もっとも過当競争のなかで、風俗まがいのサービスを提供する店も登場している。
そういったサービスを望むならその手の店をチョイスすればいい。
しかし、そこではキャバクラ本来の楽しみは味わえないはずだ。
男たちはなぜキャバクラへ行くのか。
純粋に楽しく酒を飲みたいから、女の子と話をしたいからなど、いくつかの理由があるだろう。
しかし、いちばんに挙げられるのは、キャバクラ嬢を口説き落とせるかもしれないという期待感ではないか。
口説き落とすとは、すなわち肉体的な関係を結ぶことだ。
クラブホステスといわれる職業の百戦錬磨の女性は、そこらの男が簡単に口説けるものではない、そんな常識がどこかに存在していた。
そこにリーズナブルな料金設定(クラブに比べて)の、開けた雰囲気を売り物にするキャバクラなる店が誕生した。
女の子も若くて、接客態度も客とホステスの関係ではなく、友達のノリを公然とする。
そんなキャバクラ嬢に、男たちは当たり前のように「もしかして」なんて身勝手な期待感を膨らませる。
さらに近いところから「キャバクラの女の子とヤッちゃった」なんてまことしやかな話が聞こえて来る。
そして我も我もと、勲章を獲得するために世の男たちは今夜もキャバクラへと向かうわけだ。
だが、実際はどうか。
ほんとうにキャバクラ嬢とヤレちゃうのか。
そのためにはどうすればいいのか。
そんな素朴な疑問に対する一つの答えを引き出すため、東京のキャバクラ店で働いている現役キャバクラ嬢に、いろいろな角度から取材を試み、生の声を集めて回った。
結果、十人十色というが、キャバクラ店によって、あるいはキャバクラ嬢によって考え方や姿勢もちがって、そのため同じような質問でも返ってきた答えがくいちがったりして、明確な回答は出なかった。
また東京以外の地方になれば、土地の風土や女の子の気質も変わるのは想像にかたくない。
つまり、キャバクラ遊びは、ついたキャバクラ嬢しだいで楽しくもなり、そうでなくなるとも言えるのだ。
しかし、ここで取り上げたキャバクラ嬢たちの声は紛れもなく彼女たちの本音であり、内緒の声である。
キャバクラで飲んでいるつもりになって読んでいただくもよし、アダルトライフの参考書として読んでいただくもよし。
そして彼女たちの本音を心得たなら、今夜あたり、いざキャバクラへ。いざアフターを目指して…。
キャバクラとはどんなところ?
いまとなってはキャバクラがいつ誕生したのか定かではない。
また、キャバクラの語源だが、キャバレーのような大衆的な料金体系でありながら、クラブのような雰囲気が楽しめるということから、キャバレーとクラブをミックスしてできたものだと言われている。
つまりキャバクラとは、本来手ごろな料金で女の子を話し相手に酒を飲む場なのだが、近年ではただ女の子と話をするだけではなく、客の視覚をも満たそうと、女の子がよりセクシーな下着姿で接待する「ランジェリーパブ」(ランパブ)をはじめ、キスや胸へのタッチありという「おさわりパブ」や「セクシーパブ」、もっと過激にテーブルに着いた女の子に個室でヌイてもらえる「ヌキキャバ」と呼ばれるサービスを売り物にする店も登場していて、一部ではこうした店も総じて「キャバクラ」にカテゴライズされるケースもある。
一般的なキャバクラで働く女性の仕事は、テーブルで客の隣や正面に座り、客の酒を作ったり、タバコに火をつけたりしながら一緒に酒を飲むホステスである。
基本的には座っただけでン万円といわれるような「高級クラブ」のホステスとおなじ。
が、高級クラブのホステスは客への言葉遣いや態度などの接客マナーに自信と誇りを持ち、限りなくプロフェッショナルに徹するのに対し、キャバクラ嬢はほとんどがアルバイトで、友達と酒を飲んでいる感覚の完全なるアマチュアと言える。
もっともキャバクラへ通う客は、料金もさることながらキャバクラ嬢のこうした気軽な雰囲気を求めているのだ。
ホステスの本質以外に、クラブとキャバクラを明確に分けるもののひとつが料金体系である。
健全なキャバクラの場合、おおむね時間単位で料金設定をしている。
店により基本設定時間は四十分、五十分、一時間などと異なるが、時間ごとにボーイが「そろそろお時間ですが」とコールする店と、設定時間が過ぎれば自動延長される店がある。
近年の傾向では自動延長が主流になっているようだ。
基本時間に退店するつもりならコールされるほうが安心だが、少なくとも延長を繰り返す場合には、客にとってコールは煩わしいだろうというのが自動延長システム採用の理由だという。
真偽は定かでないが、少なくともキャバクラ遊びを楽しむ客の大半が、時間延長している。
また、たとえば午後八時までの入店、八時から十時までの入店、十時からラストまでの入店と、時間帯によって料金が変わるのが一般的である。
もちろん遅い時間のほうが料金は高くなる。
これは一軒目でキャバクラへ行くというケースが少なく、どこかで飲んだ後で「じゃあ、キャバクラへでも行くか!」となるのがほとんどなので、遅い時間帯のほうに客が多いからだ。
さらに料金のことに触れると、設定料金のほかに時間単位でキャバクラ嬢の指名料が加算される。
飲み物はフリードリンクが設定料金に含まれている場合と、ウィスキーやブランデーなどのボトルを別料金で注文しなければならない店がある。
フリードリンクの店ではキャバクラ嬢の飲み物は客が負担することになり、ボトルを入れる店ではボトルの酒を振る舞う限り新たなドリンク代はかからない。
もっともキャバクラ嬢にウーロン茶やカクテルなどをねだられて承諾したら、それはプラスになる。
そしてこれらのトータルにテーブルチャージやサービス料、TAXといった料金が加算されるケースもあることを、十分に心得ておく必要がある。
目安としては、二時間でひとり二~三万円というところだろうか。(以上はすべて東京を基準にしたものである)
それでもいろいろある店のタイプ
渋谷や六本木、池袋や上野など、歓楽街といわれるところには、かならずキャバクラがある。
それもほとんど乱立状態といっていいほどで、たがいにしのぎを削っている。
何度か行ったことのある店、あるいは雑誌などに頻繁に登場する店は、雰囲気などあらかじめわかっているので安心だが、はじめての店へ入る場合、入ってみるまではどんなタイプの店なのか判断できない。
これはキャバクラに限ったことではないが、おなじサービス、おなじ料金体系でも、店の方針や考え方によって雰囲気が異なる。
たとえば、女の子の質だけをとってみても、大まかには、
①バラエティ系
②本格志向系
③ギャル系
④ごめんなさい系
に大別されるといっていい。
バラエティ系は、人妻風の落ち着いた色気が匂う女性から、昨日まで高校生でしたというようなロリコン系、まず美人には入らないがとにかく明るくて元気のいいお笑い系まで、女の子の万博会場といえるほど、いろいろなタイプの女の子が揃っている店である。
守備範囲が広い人は、このタイプの店に当たればラッキーかもしれない。
本格志向系の店は、平均以上の美人モデル系女の子ばかりを揃え、衣裳はミニのスーツが基本といった、キャバクラでありながらクラブのような雰囲気を出しているところ。
ウォッチングするにはいいが、女の子は総じてセミプロ的で、接客でも客とは一線を画すような態度がミエミエということが多い。
ギャル系はそのまま、茶髪に派手な化粧のコギャルだけを採用しているような店だ。
マニアにはたまらないだろうが、客を客とも思わず、楽しませるという姿勢に欠ける。
そのぶんノリはよく、余計な気遣いや遠慮も不要で、アフターの確率が高いともいえる。
ごめんなさい系は、入った瞬間に頭を下げて出て行きたくなるような店。
はっきりいってキャバクラの看板を背負う資格なし。
キャバクラが雨後の竹の子のようにどんどんオープンしていた時代には女の子不足からこんな店もままあった。
ここ数年は、キャバクラ嬢というお仕事が認知されたせいか、不景気が影響しているのか、女の子の粒は揃っているし、業界入門者も増えている。
しかし、ほんとうに稀に、ただ若いだけという以外に、いったいなにを基準に女の子を採用したのかと問いたくなるくらいの、いわばジュラシック・パークのような店が存在している。
たまたま入った店がこのようなごめんなさい系だった場合、席に着いてしまえば後戻りはできないから、もうひたすら飲むだけ飲んで退散すべきであるのはいうまでもない。
私たちはこうしてキャバクラ嬢になりました
二十歳そこそこの女性がキャバクラとはいえホステスという仕事に走るきっかけは大別して三つある。
ひとつはスカウト、もうひとつは自ら求人誌などを見ての応募、そして最後が、これもある種のスカウトに当たるかも知れないが、先にキャバクラで働いている、あるいは経験のある友人からの勧めである。
キャバクラで働く女性の六割ほどが、いわゆるアルバイトのホステスで、大学や専門学校の学生、OL、また別のアルバイトとの兼業者が多いという。
なぜキャバクラで働くのかという質問に対しての答えは、当然のように「お金」ということになる。
一般的なパートやアルバイトの時給は700円からよくて1,000円なのに対し、キャバクラの時給は2,000円から、店やキャリアによっては4,000円だという。
お金の必要な女性にとってみれば、キャバクラはある種の覚悟さえあれば「おいしい」仕事にちがいない。
ナンパ? キャッチ?いえいえスカウトでした
[char no=1 char=”まきか”]ブラブラ六本木を歩いている時に声をかけられたのがきっかけです。[/char]
最初はナンパかなと思っていつものように五秒の早業でその人を値踏み、そこそこイケてたからお茶するくらいならいいかなって立ち止まった。
暇だったしね。
そうしたらいきなり名刺を差し出して、「学生?それともOL?」なんて聞いてきました。
ああ、これはナンパじゃなくキャッチ(キャッチセールス)だ、と思ったけど、そういうのには絶対引っかからない自信があったから、時間つぶしに話を聞くことにしたの。
だって元カレが美容品のキャッチやっていて、手口は知っていたから。
で、よく名刺を見たらキャバクラってあって、店の名前があった。
「キャバクラって知ってる? 可愛い子で、バイトできる人を探しているんだけど」とかなんとか、そんなことを言われたと思います。
ナンパとかキャッチとかじゃなくて、もちろん芸能プロダクションでもないけど、そんなふうにスカウトされたのってはじめてだったから、ちょっといい気分になって、そのまま近くのそのお店について行っちゃった。
それに、正直お水の仕事にも前から少し興味があったから。
留学するのがずっと夢で、そのためにお金を貯めたかったし、それには水商売がいいかなって考えてた。
お酒も好きだったしね。
やれる自信もあったから。
まだ夕方前だったから、お店はオープンしていなかったけど、入口にいちばん近いボックス席に座って、紅茶を出されて、気が付いたら店長まで席に来てて、そのまま面接みたいな感じになっちゃったの。
さすがに今日から働く?って言われたのには驚いたけど、どうせやるなら一日でも若いうちにと、そのまま翌日からホステスになりました。
友人のキャバ嬢からヘルプを頼まれて
[char no=2 char=”るみい”]大学に入る前から、ファミレスのウエイトレスとか、テレフォンアポインターとか、コンビニの店員とか、全部で十以上のいろんなバイトをしてきたけど、けっきょく「これだ!」っていうのはなかったですね。[/char]
いちばんの問題点は、やっぱり収入でした。
お金が必要だからバイトするわけです。
時給八〇〇円程度の仕事だと、ほとんどスマホの通信料だけで消えちゃうし……。
それに、セクハラがいろんなところで問題になっているけど、どこでバイトしていてもけっこうあるんですよ、セクハラ。
学生のバイトだと、簡単にクビにできるからなのかな、はじめからナメられちゃうみたい。
店長に言い寄られたり、真顔で援交迫られたり。
で、ある時キャバクラで働いている高校時代の友達に、店が忙しくて女の子が足りないから、一ヵ月だけでいいからやってみないかって誘われちゃった。
はっきりいってお水(水商売)だけはやりたくなかったし、やる気もなかったです。
だって、酔っ払いのオヤジの相手なんて嫌だもん。
でも、友達の話を聞いてるうちに、一ヵ月くらいなら社会勉強のつもりでやってみてもいいかなって思っちゃった。
社会勉強なんていうのはほんとうは建て前で、自分で自分を納得させるための言い訳。
本音をいうと、単純に時給がこれまでやってきたどのバイトよりもよかったし、ちょうど欲しいヴィトンのバッグもあったから。
パーッと頭の中で収入を計算したら、一日五時間やったら一ヵ月でヴィトンなんて楽々買えちゃうんだもの。
で、一ヵ月のはずがそのままズルズル、もうすぐ二年になるのかな。
私を誘った友達は、もう一年以上も前にお客で店に来ていたサラリーマンと結婚して、いまやヤンママ。
たぶんあの時彼女に会わなかったら、欲しいバッグがなかったら、きっとキャバクラで働いてなかったと思います。
いまのところこのお仕事、大学を卒業しても続けるでしょうね。
でも、どんなに素敵な人でも、店のお客とは結婚しないと思います。
単純明快 カード借金返済のため
[char no=6 char=”瞬華”]気が付いたら五つのカード会社に、借金が合計で380万円。[/char]
ほとんどがブランド品の買い物です。
OLの給料は手取りで16万円。
家賃や電話代やほかの支払いをしたら、食費を切り詰めても残るのは1万円もないくらいなんですよ。
でも、やっぱりいい時計やバッグ、洋服が欲しいじゃないですか。
で、カードで買っちゃうんだけど、当然引き落とされない。
だから違うカードでキャッシングするっていう、もう、最悪のパターンにおちいっちゃいました。
OLの仕事だけじゃ絶対に返済できないから、とりあえず稼がなきゃと思って、求人サイトで仕事を探して、見つけたのがキャバクラでした。
ほんとうはいわゆる風俗の仕事、たとえばセクキャバとかも考えたけど、やっばりそこまではなかなか踏み切れなくて、けっきょくキャバクラに落ち着きました。
それに、良かったのはキャバクラで週に四日バイトすれば、なんとか返済可能な額の借金だったし、意外とOLやってるのも好きだから、会社を辞めたくなかったし。
キャバクラってどんなところなのかは知っていました。
会社の上司や若い子なんかが時々行っているし、領収証を回していることもあるし。
べつに普通の飲み屋と変わらないかなって。
でも、求人サイトでみたら、時給はそれなりにもらえるみたいだったから、会社の人が行かないようなエリアの店を選んですぐに電話して、会社の帰りに面接を受けました。
心配だったのは、こっちがいいと思っても、私みたいな見かけが普通の女を採用してくれるのかどうかということでした。
ところが、普通っぽさがいいんだっていわれ、採用してもらいました。