お客側からすれば、理想的なキャバクラ嬢とは、アフターなどの誘いに気軽に応じてくれる子だ。
なぜなら、店という彼女たちを拘束する空間から抜け出させれば、そこからは名目上、客とホステスという立場はなくなり、個人と個人の関係が成立する、と男は考えるから。
つまり、アフターができれば、その先に望むなにかしらへの道が開ける可能性が生まれるということである。
いいお客の条件 嫌われる客のタイプ
反対にキャバクラ店側からすれば、客は店の中で大枚をはたいて遊んでくれるのがいちばん。
しかも二度、三度と足しげく通ってくれる客なら文句なしであろう。
ところが客は、店の雰囲気やボーイのサービスよりも、女の子が目当てなのは明白。
女の子あってのキャバクラであり、女の子あっての客である。
ということで、店はキャバクラ嬢に客を通わせることを奨励し、キャバクラ嬢はそれを実行してこそ、より大きな報酬を得るシステムが成立しているのだ。
ただし、ここでの問題は、同伴は店にもキャバクラ嬢にも直接売上につながるメリットはあるが、アフターはせいぜい客の奢りで飲み食いできる程度。
アフターはせいぜい客の金で飲み食いできる程度。
店にも明確なメリットはない。
ということは、キャバクラ嬢からすれば、わざわざ飲み食いのために嫌な客とは安易にアフターしないということ。
そこで、キャバクラ嬢にとっていい客とはどのような客なのか。
嫌われる客とはどんな客なのか。
アフターに持ち込むためには、あるいはその先まで持ち込むためには、嫌われずに好かれる客であることが絶対条件なのだが。
キャバクラ事情に詳しい人はスマートな人 セコくて威張るヤツは最低
うちのお店って、お客さんはハウスボトルだと飲み放題ですが、女の子のドリンクが別料金になっています。
当店の売上のために、積極的に飲まないといけません。
飲めば飲むだけ私たちにもポイントがついて、翌月の時給に跳ね返ります。
でも、何回目かのお客さんでもフリーのお客さんでも、やっぱり席について、いきなりおねだりするのは気が引けるものです。
いちばんいいのはすぐにお客さんが「なにか飲む?」とか「一緒に飲もうよ」って言ってくれることです。
そうすれば気兼ねしなくていいですからね。
こっちも盛り上がっちゃうし、楽しく過ごせます。
ちゃんとお金払って飲みに来ているから、それ以上お金を使いたくないっていうのはわかります。
こっちだってひとりのお客さんに五杯も十杯も飲ませていただこうなんて思っていません。
そこをわかって
「ドリンク頼んだほうがいいんだろ」
と、こっちの事情を理解してくれてドリンク注文させてくれるお客さんは、遊び慣れた感じがして好感持てますね。
こういうお客さんにはラインも教えちゃうし、アフターに誘われてもOKです。
でも、なかにはチョーがつくほどセコイお客さんもいます。
絶対女の子にドリンク注文させない人。
席について二十分経ってもなにも聞いてくれないから、「ドリンク頼んでいいですか?」そう聞いてみてもダメ。
こういう人って、キャバクラ嬢を最初からバカにしているんですよね。
「お前らは客じゃないから飲まなくていい」
「酒は自腹切って飲むもんだ」
とかなんとか。
で、こんなタイプの人にかぎってアフターの誘いをしてくるんです。
もちろんNOです。
店もこういうセコイお客さんは心得ていて、たとえ指名でついても十分くらいで回してくれます。
その間ヘルプがついて十分くらいしたら戻って、また十分くらいしたら回してもらって。
結局損するのはお客さんなんですよ。
ふつうじゃない、なにか持ってる人は高ポイント ルール違反するお客は×
私にとってのいいお客っていうのは、ずばり、付加価値を持った人。
たとえば月に二回ほどかならず来てくれる人なんだけど、その人はいわゆる音楽系業界人で、なかなか取れないようなコンサートのプラチナチケットも、その人に頼めば取れちゃうの。
こういう人は個人的にずっと大切にキープしておきます。
だって店を辞めても向こうが会社辞めない限りは、チケットのお願いできるもの。
もちろんチケット代はちゃんと払います。
ただ、チケットを渡したいから、店が終わってからどこかで会おうというのが、最近のお決まり。
何回かに一回は招待券みたいなものをくれたりもするけど、たぶんそれはエッチしようってことみたい。
でもいまはまだ、それはありません。
はっきり言ってくれればいいけど、そんなふうに遠まわしなのはちょっと嫌かな。
もし直接エッチを持ちかけられたら、たぶん一度くらいなら付き合っちゃうでしょうね。
もうひとり、やっぱり月に二回ほど指名で来てくれるお客さんなんだけど、新潟の農家の息子で、両親と親戚が魚沼でお米を作ってるんだって。
いいよね、なんて言ったら、三ヵ月に一回くらいの割合で、五キロのお米を持ってきてくれるの。
最初は困っちゃったけど、五キロで八千円もする最高級のお米だっていうのを知ってびっくり。
私なんてひとり暮らしだし、自炊もしないから炊飯器もないのよ。
だからもらう度に名古屋の両親に、店から宅配便で送っています。
おかげですっかり親孝行娘です。
もちろんふつうに指名で来てくれるお客さんもいいお客さんですけど、やっぱりなんかその人なりの特徴っていうか、私たちにとっておいしいなにかがある人が最高です。
そういうのはポイントが高いんですよ。
こういうのって一般の若いサラリーマンにはないものね。
嫌なお客は、たまたま指名が重なってヘルプでついてくれた子に、必死でアプローチする人かな。
それってはっきり言ってルール違反なんですよね。
私を指名するってことは、とりあえず私を目当てに来てくれたはずじゃない。
「おいおい、お前はだれでもいいのかよ」
そんな感じになっちゃいます。
これは私だけじゃなく、みんなそう思うはずですよ。
ヘルプの子にしても、私のお客を取るなんてできっこないし、困っちゃう。
いくら内緒なんていって口説いてみても、そういうのはちゃんと報告されちゃうし、バレバレになるのを知ってるのかな。
それと一度だけ店に来て、ラインを聞かれて教えてあげたら、もうしょっちゅうラインしてくる人がいる。
店が終わってスマホチェックしたらそいつのラインが8件も入ってたりするの。
しかも内容は、
「いま近くで飲んでるんだけど、店が終わったら一緒に飲もうよ」
だって。
だったら店に来いよって。
もちろん朝でも昼でもラインしてきますよ。
はっきり、迷惑だからラインしないでって言っても、一週間以上続いた。
ほとんどストーカーじゃない?
こういうヤツはブロックしちゃうんだけど、そうしたら今度はお店に電話が掛かってくるようになったの。
当然だけどお店では、基本的にお客さんの電話を女の子に取りつぎません。
でも、暇な時だったら、営業にもつながるから、たまに取りついじゃうんですよ。
それで、店長に事情を説明して、一切取りつがないように頼みました。
お客を失ったということで、指名ノルマを増やされたけど、一安心です。
信頼関係を壊すようなお客はまちがいなく嫌われます
接待でよく利用してくれるお客さんっていうのが、とりあえずいちばんですね。
一緒に来る顔ぶれにもよるけど、一応は仕事の延長って感じだから、おたがいに顔色をうかがって、正面切ってセクハラまがいのこともしないし、ドリンクもケチらずにそこそこお金も使ってくれますからね。
ただ、こういう接待グループの場合は、私たちも気を使っちゃいます。
そのグループで誰が重要人物なのか判断しなくちゃいけませんからね。
お金を出すのはこの人だろうけど、こっちの人を盛り上げたほうがいいのかなとか。
でもあまりお金を出す人をかまわないと、次から来てくれなくなるかもしれませんし。
四人五人だと、もちろん女の子も同じ人数だけつくけど、みんな均等にご機嫌を取るのは大変。
お客さんの好みもあるでしょうし。
それに忙しいときは接待されている大事なお客さんについた子が、他のテーブルからの指名が入って席を離れたりすることもありますから。
だから私たちは接待グループの場合、最初からハイテンションでバンバンお酒を勧めちゃいます。
「はじめまして乾杯」
「続いて場内指名乾杯」
さらには
「名前当て乾杯」
とか、とにかくテンション上げてゲームしたりしながら飲ませちゃうわけです。
盛りあげるために口移しだってしますよ。
とにかくみんな酔ってさえくれれば、指名の子がしばらく席を離れてもなんとかなりますからね。
でも、嫌な接待グループってのもあります。
接待してる側の人がこっそり耳元でささやくんです。
「お小遣い渡すから、このあと隣の○○さんと付き合ってよ」
エーっなんて言ってると、上着のポケットから財布を出して、二万円抜いて握らせて、頼むよって。
適当にアフターすれば二万円の臨時収入になるけど、そういう事じゃないんですよね。
ずばりエッチしろってことでしょう。
しかも二万円?
とんでもないでしょ。
100万円もらってもお断りです。
だいたいはじめて店に来た人とアフターするなんてことはありませんよ。
何回か指名で来て、はじめてアフターの権利獲得。
あくまでも権利ね。
それでも私たちが気に入らなければ、即権利消滅。
気に入るか気に入らないかのポイントは、顔やスタイル、年齢よりも人間性ですね。
信用できる人かどうかってことに尽きちゃうかな。
たとえば、これは私自身の体験談じゃないけど、ある子が何回も通ってくれた55歳で独身のお客さんに、ある時アフターに誘われたの。
それまで全然アフターのアの字も出なかったし、いつもきっちりしていた人だったから、OKして付き合ったんだって。
で、食事して、カラオケ行って、盛り上がって。
その間そのお客さん、まったく下心もないような感じで、
「ああ、この人は本当にいい人なんだ」
と心が動いちゃって、けっきょくその子が誘うようなかたちでホテルヘゴー。
事が終わった後も紳士的で、きっちり送りまでしてくれたんだって。
そんな人って少ないよね。
だから好きになっちゃった。
真剣に付き合ってもいいとまで思ったらしいの。
ところが、しばらくして彼の友達が何人かで店に来てその子を指名しました。
そうしたら、ほかの女の子たちもその席にいるのに、
「お前が〇〇とヤッた子か。けっこう声が大きくて、隣の部屋に気を使ったって言ってたけど、そんなに大きな声出すの?」
「可愛い顔してるのに好きなんだってね。二回目もおねだりしたんだって?」
とか、もっともっといろんなことを言われたわけ。
しかも全部事実。
ようするに自慢げに友達に言いふらしていたってこと。
それさえなければ、ほんとうにいいお客さんだったのに。
こういう人は最低の最悪。
私たちからすると、二度と来て欲しくないお客ですよ。
もっともその人、二度と来なかったらしいけど。